日本国籍を失ってしまう国籍法15条の「催告」とは

日本国籍と外国籍の重国籍者には、「国籍選択の義務」(国籍法14条1項)がある。

 

これは、日本国籍を選ぶか、外国籍を選ぶかという義務である。

 

日本国籍を選ぶ場合、外国籍を「離脱」するか、日本国籍を選んで外国籍を放棄するという「宣言」をするかのどちらかである(国籍法14条2項)。

 

とりあえず、日本国籍を選ぶ場合、「離脱」か「宣言」のどちらかをすれば、「国籍選択の義務」は果たしたことになる。

 

しかしながら、「離脱」か「宣言」をしない場合、法務大臣からの「催告」を受け、日本国籍を剥奪される場合があるというのが、国籍法15条の「催告」の問題である。

  

23日の報道では、蓮舫さんは台湾籍の「離脱」手続が完了したようなので、もはや国籍法15条の「催告」を受けることはない。

 

しかしながら、この「催告」がどういったものか、理解しておくことも大切である。

 

なぜなら、重国籍者はたくさんいるからだ。

 

一説では数十万単位でいるとのことである。

 

さて、まずこの「催告」は、「個別」に通知するのが原則である(国籍法15条1項)。

 

基本的に、当局は、重国籍者をある程度把握している。

 

いつ把握するのか。

 

それは、日本の役所(在外公館含む。)に、出生届を提出したときである(日本人と外国人との間の子供であれば、重国籍の可能性が非常に高い。)。

 

ほかにも、蓮舫さんのように、「国籍取得」によって日本国籍を取得した人などもいる。

 

重国籍になるパターンはいくつあるので、そのうち解説したいと思う。

 

いずれにせよ、このようにして把握した情報で、「個別」に通知できればよいが、住所が不明になるものもいる。

 

その場合、「官報」に掲載して、「催告」することになる(国籍法15条2項)。

 

そして、「催告」を受けた日から1か月以内に、「離脱」か「宣言」をしない場合、日本国籍を失うことになる(国籍法15条3項)。

 

この「催告」は、平成21年の段階で、一度もされたことがないのが、政府の答弁で確認されている。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000417120090512010.htm

 

○稲田委員

一部省略

この件に関連いたしまして、入管法ではなく国籍法の問題なんですけれども、法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民が国籍を選択しなければならない時期になったにもかかわらず選択をしないときには、書面で催告ができるということになっています。ところが、この催告を一度もなさったことがないということを聞いて、私は驚いているわけであります。

 我が国は二重国籍を認めていないにもかかわらずこの催告制度を一度も行わなというのは、まさに行政の怠慢で、もっと言うと、不作為によって事実上二重国籍を認めているという、そんな運用をしていることになるのではないかと思いますけれども、民事局長の見解をお伺いいたします。

 

○倉吉政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、法務大臣がこの法律に基づく国籍の選択をすべきことを催告した例というものは、これまでございません。」

 

※ 太字は管理人 

 

その後も、管理人の知る限り、「催告」がされたことは、ないようである。

 

この「国籍選択の義務」や「国籍法15条の催告」の規定ができたのは、昭和59年の国籍法改正時であるから、約30年間は、されたことがないことになる。

 

これは、行政の怠慢か?

 

とりあえず、落ち着いて考えてみよう。

 

すぐに怒ったり、騒いだり、誰かのせいにしたりするのは、日本のやり方ではないと思う。

 

まず、前提となる「国籍選択の義務」は、20歳までに重国籍になった人は22歳までに、20歳になった後に重国籍になった人は2年以内に、いずれかの国籍を選ばなければならないというものである。

 

昭和59年の国籍法改正以前に、重国籍になっていた人は、やはり「国籍選択の義務」はあるものの、経過措置によって、国籍選択をしなかった場合でも、国籍選択をしたとみなされることになっている(昭和59年改正時の附則3条)。

 

したがって、「国籍選択の義務」違反になることはないので、国籍法15条の「催告」を受けることもないことになる。

 

そうすると、重国籍になるパターンで一番多いのは、管理人の経験上、出生の時なので、昭和59年に国籍法が改正された後に生まれた人が、主な対象になると考えられる。

 

昭和59年改正国籍法の施行日は、昭和60(1985)年1月1日なので、22年後の平成19(2007)年以後に、「国籍選択の義務」違反者が多く出てくる形である。

 

したがって、義務違反者が多く出てくると思われる時期から、約10年を経過しているため、そろそろ「催告」を行うべき時期にきていたのではないかとも思われる。

 

ただ、怠慢かといわれると、微妙なところであろう。

 

というのも、国籍法15条の「催告」をすると、色々な混乱が予想され、かなりハードルが高いと思われるからである。

 

たとえば、管理人は、次の点が気になる。

 

既述のとおり、住所が不明等になってしまった者に対しては、「官報」で「催告」しなくてはならない(国籍法15条2項)。

 

普通、「官報」なんて見る人はいないので、知らないうちに日本国籍が消える人が発生してしまう。

 

するとどうなるか。

 

日本国内にいて、日本国籍を失ってしまうと、いきなり犯罪者になってしまう可能性があるのである。

 

普段、日本人は意識しないが、日本国内に無条件で存在していいのは、日本人(日本国籍保有者)だけある。

 

外国人が、日本国内に滞在するためには、日本政府から何らかの許可を、受けなければならないのが原則である。

 

外国人が、あるていど長期間、日本に滞在するためには、「在留資格」というものが必要になる。この事務は、法務省入国管理局が担当している。

 

この在留資格を持たない者は、「不法に」日本に滞在していることになる。

 

よく外国人問題で、「不法入国」・「不法滞在」・「オーバーステイ」などの言葉を聞く人もいると思うが、「官報」で「催告」を受けて、気がつかなかった重国籍の日本在住者は、その「不法滞在」になってしまうのである。

 

まあ、実際は、何らかの便宜的な手当てがなされるとは思うが、短期間であればまだしも、何十年も不法滞在などになれば、便宜的な手当ては難しいのではないだろうか・・・。

 

その他、予想されない問題が生じてしまうことも考えられる。

 

行政には、がんばってもらうしかないだろう。