蓮舫さんの二重国籍問題(池田信夫さん・アゴラ)

ネット上のメディアも、盲目的に信用することは、絶対にしてはいけない。

 

蓮舫さんの二重国籍疑惑を追及している池田信夫さん(アゴラ)について、問題提起は素晴らしいと思うが、推測や勘違いで、事実と異なることを書いていることが、しばしばある。

 

ハッキリしないところは、「推測ではあるが」等と前置きをして書けばよいのに、断定的に書くことが多いのが残念である。

 

国籍法の専門家ではないのなら、なおさら、よく確認してから書いてほしいと思う。

 

池田さんの名誉のために言っておくと、池田さんは、法務省民事局の担当者に、取材をしているようである。

 

しかし、その人を盲目的に信じすぎである。

 

池田さんも、ある程度、社会経験が長いなら、法令の改正があったときには、法案の立案担当者が、解説本を書くことがよくあるのは知っているのではないだろうか。

 

池田さんは、その本(昭和59年改正時の国籍法の解説本)が存在するにもかかわらず、その本すら読んでいないようである。

 

したがって、取材不足といったところであろう。一応、その本が存在することは、いずれ分かるようにしておいた。

 

さて、この問題を考えるため、簡単に国籍法を知っておこう。

 

まず、重国籍者の義務として、「国籍の選択の義務」(国籍法14条1項)というものがある。

 

これは、日本国籍外国籍を持つ重国籍者は、日本の国籍か外国籍かのどちらかを選びなさい、という義務である。

 

そして、日本の国籍を選ぶ場合には、方法が2つある。(1)外国籍を「離脱」するか、(2)日本の国籍を選んで、外国籍を放棄するという「宣言」をするかの2つである。

 

そして、(1)か(2)をすれば、「国籍の選択の義務」(国籍法14条1項)は、果たしたことになるのである(池田さんは、ここを勘違いしているようである。)。

 

ただし、(2)の「宣言」をしただけで、(1)の「離脱」ができていない人は、「離脱」の「努力義務」がある(国籍法16条1項)という形になっている。

 

この「国籍の選択の義務」については、既述の解説本に、2か所も記述がある(p160、p163。いずれもアンダーライン部分)。

 

この解説本は、「ここが知りたい国籍法100題」という。繰り返しになるが、昭和59年改正国籍法の立案担当者たちが記載した本である。

http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002458313-00

 

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国籍法は、次のとおりである。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO147.html

 

 

第十四条  外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。 

2  日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法 の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。

第十六条  選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。 

 

 

2~5(略) 

 

 

基本的に、池田さんは、(1)の「離脱」をせずに、(2)の「宣言」だけでは、「国籍の選択の義務」(国籍法14条1項)の違反である(国籍法違反)と主張している。

 

ただ、既述の解説本では、そんなことは一言も書いていない。

 

「選択宣言の結果(略)、選択義務は既に履行したことになります」や「日本国籍の選択宣言をすれば、国籍の選択の義務は履行したことになります」と書いている。

 

ちなみに、蓮舫さんは、9月6日の産経新聞の記事では「あわせて台湾籍の放棄の宣言をしています。」と発言している(一応、これは真実と仮定しておく。)。

 

そうすると、蓮舫さんは、30年近く国籍法16条1項の「努力義務」に違反した、せいぜい「違法状態」くらい、が妥当だと思われる。

 

もちろん、台湾籍の放棄をしているというのが嘘なら、「国籍の選択の義務」(国籍法14条1項)違反でよいだろう。

 

池田さんのツイッターを見ると、管理人がいくつか飛ばしているが、次のようなやり取りがあって、最後には、意見が合わない人をブロックしている。

 

 池田信夫

 @ikedanob 

9月19日

国籍法16条の「努力義務」はブラジルのように国籍を離脱できない場合の規定で、14条2項の「国籍選択の宣言だけでいい」という規定もそれに対応する。台湾の場合は離脱できるので、努力義務も宣言も無関係。

 

池田信夫

@ikedanob 

9月19日

台湾は努力義務の対象ではないので、「国籍離脱の努力をしているから違法ではない」という蓮舫の言い逃れは誤り。これは国籍法の特例(附則5条)で取得した場合も同じ。

 

池田信夫

@ikedanob 

9月19日

@motoken_tw 16条云々というのは違うようですね。しかし14条違反(重国籍状態)だという結論は、今まで聞いた専門家は100%一致。

 

池田信夫

@ikedanob 

9月19日

@motoken_tw 蓮舫二重国籍だというのは、あなたも認めた事実問題。それが14条違反にあたらないのはブラジルなどの特殊な場合で、台湾の場合は22歳過ぎて選択しなかったら14条違反。これが普通の解釈だと思います。

 

池田信夫

@ikedanob 

9月19日

@motoken_tw 法務省の担当者の見解。ただし彼は「14条に抵触するが違法とまではいえない」と慎重な表現をしていた。

  

池田信夫

@ikedanob 

9月19日

@motoken_tw 誤解しているのはあなた。国籍法は対象国によって「離脱」を求めるか「宣言」でいいかの2段構えになっている。対象国を明記できないから、わかりにくい書き方になっているだけ。

 

池田信夫

@ikedanob 

9月19日

@motoken_tw だから14条2項と16条はリンクしているが、台湾の場合は「離脱」できるのだから「宣言」も「努力」も必要ない。論理的に考えればわかる。

 

池田信夫

@ikedanob 

9月19日

司法試験を通った人がすべての法律を正しく解釈できるわけではないし、国籍法は検事とも関係ない。彼の「事実問題」についての認識は間違っている。非生産的なのでブロック。 @montagekijyo @motoken_tw

 

次に紹介する事例は、最終的に訂正しているのでよかったのであるが、テレビ番組(そこまで言って委員会)に引きずられて、事実誤認のことを安易に書いているのは、いただけない。

  

池田信夫

@ikedanob 

9月18日

RT @ozuemura: 蓮舫がなぜ二重国籍ではいけないか、金美齢さんが簡潔かつ明瞭に解説。渡辺・福山・原口が頷いてるのが印象的。 #そこまで言って委員会 #蓮舫https://t.co/oi9UkiMNEk

  

池田信夫

@ikedanob 

9月18日

総務相が国籍法14条違反(当選無効)と明言した以上、あす総務省も公式見解を求められるだろう。公選法10条では被選挙権を「日本国民」に限定しているので、日本国籍が確定していない状態で被選挙権を与えるのかどうか。 https://t.co/Vs0UjlleQP

 

ここで、議論があらぬ方向に行きそうなので、ヤバイと思って、ちょっと「動く」ことにした。

 

というのも、日本国籍を取得する手段は、(1)「帰化」と、(2)「届出(国籍取得)」があるが、(1)と(2)では、かなり手続が違う。

 

金美齢さんは(1)「帰化」、蓮舫さんは(2)「届出(国籍取得)」というのは、ある程度、国籍法を知っている人なら、すぐ分かることである。

 

池田さんは、金美齢さんの体験談を、そのまま鵜呑みにし、その体験談どおりの手続をしていない蓮舫さんを、責め始めたのである。

 

簡単に言うと、「帰化」は、元の国籍を事前に離脱するのが原則。「届出(国籍取得)」は、事前離脱の必要はないが、重国籍になった人は、22歳までに、どちらかを選ぶ義務がある。

 

そして、国籍法は、法務省民事局が所管しており、総務省が何か言える権限はない。これは、政府関係の仕事をしている人なら常識である。

 

数時間後、池田さんから、次の発言があった。

  

池田信夫

@ikedanob 

9月19日

複数の専門家からコメントがありましたが、金美齢氏は「帰化」を「国籍取得」と混同している可能性があります。その場合も原口氏の「14条違反で当選無効」という総務省見解(?)は有効。 RT 蓮舫氏は「日本人ではないので国会議員になれない」 https://t.co/UCy8Rsiwa4

  

池田さんは、自分も間違っていたのに、金さんのせいにしている。ある意味、すごいなと思った。

 

そして、また発言があった。

  

池田信夫

@ikedanob 

9月19日

コメント欄で指摘されたが、金美齢氏のケースはちょっと違うようだ。しかし22歳までに外国籍を離脱をしないと日本国籍を選択できないので、蓮舫の14条違反は明らか。 【追記あり】蓮舫氏は「日本人ではないので国会議員になれない」 https://t.co/JUQZiYVKkf

 

池田さんが、あまり国籍法を理解していないのは、次のブログ記事からも分かる。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51984379.html

 

とうとう朝日新聞で違法行為をカミングアウトする男が出てきた。この佐々木てる(青森公立大准教授)の両親は日本人で、アメリカ滞在中に彼が生まれた。40歳のとき「もしかしてパスポートがとれるかもと思い米国大使館に行ったら、本当に発行されて驚きました」という。

 

本人も二重国籍を認めているので、彼は国籍法15条で催告を受け、1ヶ月以内に日本国籍を選択しなければ第11条「自己の志望によって外国の国籍を取得したときは日本の国籍を失う」によって自動的に日本国籍を失う。この記事では二重国籍を正当化しようとしているが、彼の違法行為はそれとは別だ。

 

実際にブログを見てもらっても分かるが、よりによって、間違っているところを太字で強調している。

 

佐々木さんは、アメリカという生地主義(その国で生まれただけで、その国の国籍を取得)の国で、日本人両親から生まれているようなので、この場合、佐々木さんは、生まれたときからの重国籍者である。

 

アメリカのパスポートを取得した時に、アメリカの国籍を取得したのではないのである。

 

したがって、本件事案では、国籍法11条「日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」の、「自己の志望」には当たらない。

 

これも、国籍法をある程度知っている人なら、常識である。

 

なぜ、池田さんは、国籍法に詳しい人に聞かずに、このような記事を書いてしまうのか。

 

それとも、池田さんの国籍法のブレーンは、それほど国籍法の知識が浅い人なのか。

 

正直、発信力のある人(池田さんのツイッターのフォロワーは、24万人とのこと。)は、なるべく正確な発言をお願いしたいものである。